皆さんの身の回りにある「デザイン」は、どこから来たのでしょう?世界中の「ひらめき」と「工夫」をたどる旅
皆さんの身の回りにあるもの、例えば今ご覧になっているパソコンやスマートフォン、座っている椅子、毎日利用する公共交通機関や建物。これらすべてに「デザイン」が施されているのは、皆さんご存知の通りですよね。
デザインと聞くと、「おしゃれな絵を描くこと」や「カッコいいものを作ること」といったイメージが強いかもしれません。しかし、私たち株式会社一石屋が考えるデザインは、もっと広範で、もっと人間らしいものだと感じています。
それは、人類が**「もっと便利にしたい」「もっと安全にしたい」「もっと伝えたい」「もっと気持ちよくなりたい」**といった、「困った!」や「こうなったらいいな」という素朴な願いを解決するために、知恵を絞って「かたち」を生み出してきた、壮大な物語なんです。
デザインって、人類の「困った!」から生まれた、面白い発明なんです。
このコラムでは、はるか昔の古代文明から、私たちが暮らす現代、そして未来まで。世界中で生まれたたくさんのデザインが、どんな風に人々の暮らしや社会を変えてきたのかを、私たち一石屋ならではの視点で、一緒に「へぇ!」を探す旅に出かけてみましょう。
古代文明のデザイン:ピラミッドや文字に秘められた「神様と王様のメッセージ」
紀元前数千年から、およそ2300年前まで続いた古代文明の時代。
この頃、人々は川のそばで農業を始め、たくさんの人が集まって暮らす「都市」が誕生しました。
それに伴い、共同生活のルールや、社会をまとめる「リーダー」が生まれてきたのは、皆さんも歴史の授業で学ばれましたね。
この時代のデザインは、とにかく**「神様はすごい!」「王様は偉い!」というメッセージを、「とんでもなく大きなかたち」で表現することに、全力を尽くしていました。
エジプトのピラミッド: この巨大な四角錐の建物は、「王様は死んだ後も神様になるんだぞ!」というメッセージを込めた、超巨大な『お墓兼モニュメント』です。
数トンもある石を何万個も積み上げるなんて、当時の技術でどうやって実現したのでしょう?
そのための「デザイン」(建物の設計や、材料の運び方、積み上げ方などの工夫)が、今も私たちを驚かせています。
メソポタミアのジッグラト(神殿): これは、神様との距離を縮めようと、空に向かって階段状に高く伸びていく建物です。
やはり「神様はここにいるぞ!」「偉い人が神様と繋がっているんだ!」ということを、はっきりと示すためのデザインでした。
ヒエログリフ(象形文字): ただの絵ではありません。神様への祈りや、王様の命令を正確に伝えるための、「記号としてのデザイン」です。
まるで昔の絵文字のように、一つ一つに意味が込められていて、デザインが「コミュニケーションの道具」として使われ始めた、最初の形とも言えるでしょう。
古代のデザインは、**「目に見えないもの(神や権力、社会のルールなど)を、目に見える大きなかたちで表現する」**ことで、たくさんの人々をまとめ、社会を安定させるための、**スケールの大きな「ビジュアルによる情報伝達戦略」**だったと言えるのではないでしょうか。
【ちょっと耳寄りな話:古代の『黄金比率』って?】
古代ギリシャでは、**「人間が一番美しいと感じるバランス」**を徹底的に研究し、その究極の答えを「黄金比率」と呼びました。
これは、約1:1.618という特別な比率のことで、パルテノン神殿のような建物の美しさや、彫刻のプロポーションにも秘密が隠されていると言われています。
自然界の貝殻や植物の葉の並びにも見られるこの比率は、科学と美が融合した、古代人の驚くべき発見でした。
皆さんの身近なものにも、この黄金比率が隠れています。
狩猟採集の暮らしの中で、火焔型土器のようなダイナミックな造形や、豊かな表情の土偶が生まれ、自然と深く結びついた「祈りのかたち」が育まれていました。
中世のデザイン:大聖堂やモスクに宿る「神様への本気の想い」
およそ4世紀から15世紀頃の中世。この時代は、キリスト教やイスラム教といった大きな宗教が、人々の暮らしや文化のど真ん中にありました。
皆さんの想像以上に、人々は宗教的なことに関心が強かった時代と言えるでしょう。

ノートルダム大聖堂
- ヨーロッパの大聖堂(ゴシック様式): 高く高く天に向かって伸びる尖った塔、そして色とりどりの光が差し込む大きなステンドグラス。
これらは、「神様はこんなに偉大なんだ!」という、人々の**「神様への本気の想い」**を形にしたデザインでした。石を積み上げ、ガラスをはめ込む職人さんたちは、まるで神様のために作品を作るかのように、ものすごい技術と時間を使って大聖堂を作り上げていったのです。 - イスラム世界のモスクや細密画: イスラム教では、神様の絵を描くことを避ける習慣があったのは、皆さんもご存知かもしれません。
でも、だからこそ、モスクの建物には美しく複雑な幾何学模様がぎっしりと描かれ、細密画(とても細かい絵)では植物の模様や文字(カリグラフィー)が芸術的に表現されました。
これは、「絵が描けないなら、別の方法で美しさを追求しよう!」という、見事な『デザインのひらめき』だったと言えるでしょう。
中世のデザインは、「目に見えない神様への信仰」を、それぞれの文化や技術に合わせて、「目に見える最高の形で表現しようとした」、とても精神性の高いデザインの時代だったと言えます。
日本では、平安時代から鎌倉・室町時代へと移り、武士の時代が始まっていました。
雅やかな平安貴族文化、そして質実剛健な武士の精神と禅宗が融合した「侘び寂び」の美意識が育まれる、精神性の高いデザインが生まれていました。
ルネサンス・バロック・ロココ:絵画や家具が語る「人間って、もっとすごいんだ!」
およそ14世紀から18世紀にかけてのヨーロッパ。この時代は、まるで眠っていた文化が一気に目を覚ますように、「人間って、もっとすごいんだ!」という考え方(人間中心主義)が広まっていきました。
- ルネサンス(14~16世紀): レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロの名前は、ご存知ですよね。
彼らの絵画や彫刻、建築は、人間の体や感情をとてもリアルに表現しようとしました。
遠くのものが小さく見える「遠近法」や、人間の体の仕組みを研究する「解剖学」まで取り入れて、まるで本物そっくりに描く。
これは、「人間って、こんなに美しいんだ!」という感動をデザインで表現しようとしたのです。
特に、古代ギリシャから受け継がれた「黄金比率」の考え方が、この時代に再び注目されました。
人間が最も美しいと感じる比率として、絵画の構図や建築のプロポーションに意識的に取り入れられ、作品に洗練された調和をもたらしました。 - バロック(17世紀~18世紀初頭): 当時のヨーロッパには、絶対的な力を持つ王様がたくさんいました。
彼らは「俺たちの国はこんなにすごいんだぞ!」ということを、「ド派手で、見る人を圧倒するデザイン」で示そうとしました。
曲線がグニャグニャと入り組み、金色の装飾がこれでもかとばかりに施された宮殿や教会は、まるで演劇の舞台のよう。見る人を「うわー!」と驚かせる、「感情に訴えかけるデザイン」**が特徴です。 - ロココ(18世紀): バロックのド派手さから一転、この時代は、貴族の家で開かれるサロン(交流会)のように、「優雅で、軽やかで、繊細なデザイン」が流行しました。
貝殻や植物の形をモチーフにした曲線的な模様や、明るく優しい色合いが特徴で、まるで可愛らしい絵本の世界に迷い込んだような空間がデザインされました。
このルネサンスからロココにかけてのデザインは、「人間が何を考え、どう感じ、どんな風に生きていきたいか」ということを、絵画、彫刻、建築、家具、庭園など、あらゆる「かたち」で表現し、人々の生活空間を芸術で豊かに彩った時代だったと言えるでしょう。
産業革命とモダニズムの胎動:機械が「デザイン」を面白くした!?
「効率」と「シンプル」を求めた時代
およそ18世紀後半にヨーロッパで始まった「産業革命」。
これは、手作業で作っていたものが、機械を使って工場で大量に作れるようになった、ものすごい変化でした。
- デザインの変化: 最初は、手作り品と同じように装飾をたくさんつけたデザインが多く、機械で作ったのに「なんかごちゃごちゃしてるな…」というものも多かったそうです。
でも、機械で大量生産するなら、「もっとシンプルで、誰にでも使いやすい形」の方がいいんじゃないか?という考えが生まれてきました。 - 「職人の技」を大切にする動きも: そんな中、「機械ばかりじゃなくて、やっぱり手で丁寧に作ったものっていいよね!」という「アーツ・アンド・クラフツ運動」(ウィリアム・モリスなどが有名です)のような動きも生まれました。
これは、「質素だけど、温かみのある美しさ」を再評価した、大切な動きです。 - モダニズムの誕生(20世紀初頭): そして20世紀になると、「デザインは、ムダな飾りは一切いらない!」「形は機能に従うんだ!」という『モダニズム』という考え方が、世界中で大きな流れになります。
ドイツの「バウハウス」という有名な学校や、オランダの「デ・スティル」というグループなどがこの考え方を広めました。 鉄やガラスといった新しい素材を積極的に使い、「シンプルで、誰にでも分かりやすく、そして合理的なデザイン」が、現代の私たちの身の回りにある、たくさんのプロダクト(製品)や建物、そしてポスターなどのデザインの『基礎』を作っていったのです。
この産業革命からモダニズムの時代は、「機械がデザインの可能性を広げ、そして『ムダをなくして、シンプルで、機能的であること』こそが美しい」という、新しい美意識を私たちにもたらした、とても面白い時代だったと言えるでしょう。
西洋の技術や様式を積極的に取り入れ、和洋折衷のデザインが盛んに。モダンな都市が形成され、活版印刷によるグラフィックデザインや、家電製品の登場など、新しい時代の「かたち」が生まれ始めていました。
20世紀後半から現代:インターネットが「デザイン」を身近にした!
「多様」で「やさしい」デザインの時代
第二次世界大戦が終わった後、世界は大きく復興し、経済もぐんぐん成長していきました。
すると、デザインも私たちの暮らしの「当たり前」を彩る、とても大切なものになっていきます。
- デザインの多様化: アメリカでは、カラフルで楽しい家具や日用品が生まれた「ミッドセンチュリーモダン」。
北欧では、シンプルだけど温かみのある家具や食器など、地域ごとに様々なデザインが発展しました。
1960年代には、アンディ・ウォーホルに代表される「ポップアート」がデザインにも影響を与え、「みんなが知ってる、あのマークや絵もデザインになるんだ!」という『大衆文化のデザイン』が注目されます。
1980年代以降は、「ポストモダン」という考え方も登場し、「シンプルすぎるのも味気ないよね?」「もっといろんなデザインがあってもいいじゃないか!」と、多様なスタイルや、ちょっと面白い飾りが再評価されるようになります。 - 「インターネット」がデザインを大変化させた!: そして20世紀の終わりから今にかけて、インターネットとデジタル技術が、デザインのあり方をガラッと変えました。
パソコンで簡単に文字や画像を編集できるようになったり(DTP)、製品をパソコンの中で立体的にデザインできるようになったり(3Dモデリング)。 何よりも、ウェブサイトやスマートフォンのアプリのデザイン、つまり『Webデザイン』や『UI(ユーザーインターフェース)/UX(ユーザーエクスペリエンス)デザイン』といった、新しいデザインの分野が次々と生まれたのです。
デザインは、単に「見た目がきれい」なだけじゃなく、「どうすれば使いやすいか?」「どうすれば気持ちよく使えるか?」という『体験』を設計するものへと進化しました。
現代のデザインは、世界中の情報が瞬時に手に入る『グローバル化』、あらゆるものがネットに繋がる『情報化』、そして地球環境問題や社会の様々な困りごとへの意識が高まる中で、『持続可能性(ずっと使い続けられるか)』『多様性(色々な人が使えるか)』『インクルーシブネス(誰も仲間外れにしないか)』といった側面が、とても強く求められています。
AI(人工知能)の進化もデザインの作り方に大きな影響を与え始めており、未来のデザインは、テクノロジーの力と、倫理的な視点、そして何よりも『人間中心の視点』が、どう手を取り合って、社会に貢献していくかが問われています。
これは、私たち株式会社一石屋が最も力を入れているテーマの一つでもあります。
エンディング総括文:デザインの歴史から、あなたの「未来」をデザインするヒントを見つけよう
世界のデザイン史をたどるこの壮大な旅は、単なる昔話ではありません。
それぞれの時代、それぞれの場所で、人々が何を求め、何を感じ、そしてどのように「かたち」にしてきたのか。
それは、人間が持つ根源的な創造性と、社会の変化に「どうしたらいい?」と向き合ってきた美意識の、尽きることのない探求の記録です。
古代の神殿から現代のスマホアプリまで、デザインは常に人々の生活を豊かにし、社会の課題を解決し、そして次の時代を指し示してきました。
私たち株式会社一石屋は、この人類の創造性の軌跡から学び、そして現代、そして未来の社会が本当に求める『デザイン』とは何かを、日々探求し続けています。
このダイジェストが、皆さんの日常に潜むデザインの奥深さに気づき、そして「もし自分が、次の時代の『美意識』をデザインするとしたら、どんな『かたち』を創り出すだろう?」と考えるきっかけとなり、未来を共創する新たな「ひらめき」が生まれる、そんなインスピレーションとなれば幸いです。
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